Re: 因果律と自由意志

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|> 意志が《自由に近づけるかどうか》が論じられているわけではない。 |> 意志が《自由かどうか》が論じられているのである。 |> すでに多くの哲学者によって語られているように、自由意志は全面 |> 的に在るか、無いか、である。 |> 《自らの心の一瞬一瞬を自らの意志で決定できるか》との私の文章 |> が誤解されてしまったようである。それは、そういうことが必要か |> とか難しいとかいう性質のものではない。《自らの心の一瞬一瞬を |> 自らの意志で決定できなければ》意志の自由は存在しないのである。 |> たとえば、｢買い物に出かけよう｣との意志はどうして生じたのか? |> さっきまで｢この仕事が済むまで外出せずにがんばろう｣と決意して |> いたのに?この気まぐれは一体どうしたことだ?どうして、｢やはり仕 |> 事優先でいこう｣との意志が生じないのか? |> 自由意志は《自在な意志》ということである。《その時、考えもし |> なかったようなことをも意志させうる意志》である。まるで粘土を |> 操るようにして意志を生じさせることが出来なければ、自在な意志 |> とは言えない。結果ではなく、原因であるためには物を操るように |> して自身の意志を生じさせる次元に在らねばならない。これはまさ |> に《超越》であり、だから《自由意志という思想は妄想》と言われ |> るのである。 |> 《心は内在的な現象》と私が言ったのは、心は粘土と同じというこ |> となのである。粘土はその形を変えていく。心もその様相を刻々と |> 変えていく。粘土は意志を持たぬ。粘土は手に従い、手は心に従う。 |> 粘土が自由であるためには、粘土は心をもたねばならぬ。心が自由 |> であるためには心自体が心を内包せねばならぬ。内包される心は高 |> 次元の心である。原因としての心である。われわれが知りうるわれ |> われの心（意志・感情・思考・意識その他）はそういう高次の場に |> 自らを置くことが出来るのか?。自身の心を操作・コントロールす |> る心というものをわれわれは知らぬ。心を沈静させようとする心の |> はたらき、欲求を抑えようとする心、熟慮等は内包される心でもな |> く、高次元の心でもない。これは通常の連鎖する結果としての心で |> しかない。《私の心》とか《私の意志》という表現をし、それを鵜 |> 呑みにしてしまうと、あたかも実体であるかのように考えてしまう |> のである。 |> 脳生理学はわれわれに脳のはたらきを教えてくれる。脳がそのはた |> らきによってさまざまな《野》に分かれ、相互に関連し、全体とし |> て活動しているという事実は、心の複雑さを理解するのに大いに役 |> 立つ。眠るのを欲求する心があり、それを抑制しようとする心があ |> る。ふと回りの気配に気づく心があり、何を思ったか椅子から立ち |> 上がろうとする意志がある。忘れて思い出せない心があり、ひらめ |> きに歓喜する心がある。これは心の気まぐれのせいではない。脳の |> それぞれの《野》におけるはたらきが相互に連結し合っている結果 |> である。われわれは自身の脳内で何が起きているかを知らぬ。影は |> その主を知らぬのだ。《心は内在的な現象》と私が言ったのはその |> ことである。脳のはたらきを知り、それを利用することは出来るし |> すでになされているが、利用することと意志のままに自在に操ると |> いうのは、根本的に違うのである。意志自体が脳の働きによるのに、 |> 脳を超越して、脳内に起こるすべての変化のシナリオを書くという |> 《自由意志》の存在は考えられぬ。それはもはや信仰でしかない。 |> 特異な例だが、多重人格障害というのは、脳の深遠なはたらきを抜 |> きにしては考えられぬ。人格を産み出す《自由意志》が存在すると |> 考える人は居まい。 |> 今回はここまで。