意識の声 No.16 より

1991年 11月号

 

 人間というのは非常に不思議な存在です。同じような環境のもとに生まれ育ち、同じ学校で同じような教育を受けながら、方や右翼になり、方や左翼の闘志となって、思想的に対立するという例を見ますと、人間は知性やメンタリティーを越えた「過去からの謎の脈絡」に寄って生き、行動しているとしか思えませんですね。有名な音楽家が天皇絶対論を唱える右翼の代表的な人物になるかと思えば、高貴な家柄の息女であった人が社会主義者として闘争の生涯を生きるというのは非常に興味深いところです。この女性はインドの公明な修道女を批判していわく、「神様を信ずれば誰でも救われますよ、といっても、現実にコインロッカーの中に赤ん坊が捨てられたりする世の中が、そんなことで救われるわけはない」という意味のことを述べていました。この場合はどちらも正しいが、どちらも間違っていると言えるでしょう。妙な言い方ですが、私はこれ以外に表現法がありません。正誤を判断する絶対的な基準が見いだせないからです。

 

 ある人の言動が正しいか間違っているかを見極めるには、後になってその人の言動が多くの人にどのような影響を与えたかという、その結果によって判断する以外に方法はないでしょうね。多数の人に良き影響を与えたのであれば、それは正しかったのでしょうし、悪しき影響を残したのであれば、それは間違っていたと言えるでしょう。

 

 結局、人間は周囲の人に何らかの影響を与えながら生きているのでありませんか。家族、友人という狭い世界から広大な社会に至るまで個人の活動範囲は千差万別ですが、各個人が何らかの影響を他人に及ぼしながら生きており、また逆に他人から何らかの影響を受けながら生きているという事実は否定できないでしょう。このように見ますと、人間一人の存在は、かけがえのない貴重なものであることが分かります。一人の小さな親切な行為が他の人に人生観を大きく変えさせるほどの影響を与えたとすれば、本人の宇宙における存在価値は確立されたといえるでしょうね。それは他人を救ったことになるからです。

 

 要するに、人間にとって宗教や哲学の難解な理論は必要なく、他人に良き影響を与えるような生き方をするだけでよい、という単純明快な考え方をすることによって生きれば、それでよいのではありませんか。今日(一〇月二七日)も最寄りの駅で降りてタクシーを待つあいだ、駅前で交通遺児のための街頭募金運動を数名の若い男女が行っていましたが、箱の中に小さな男の子二人がお金を入れているのを見て、私はやはり影響を受けましたね。少なくともその時の一瞬、私はこの募金のボランティアー達や子供達の高貴な精神に劣るのだと。

 

 ここで比較の法則というものが導入されます。子供達と私の比較です。相手はたかが子供ではないか、というわけにはゆきません。なぜなら、さきほど申しました「過去からの謎の脈絡」を考えれば、その子供達は私が足下にも寄れないほどの素晴らしい過去生を持っているかもしれないからです。そこで自分と、その子供達との比較が始まるのですが、そのときに私の内部で一つの学習が行われます。「あの子供達のように純粋になろう」という意欲の湧出を自覚するからです。

 

 以上は何も難解な解釈や理屈を述べ立てているのではありません。恵まれないで交通遺児に拠金すれば相手は助かるにきまっています。そのことを認識して実行に移すには、他人からの良き影響を受ける必要があったという、ただそれだけのことです。

 

 こうして他人からの影響を受けて自分自身が良き言動をなすならば、また自分が助かることになります。良き想念波動は良き人物や良き物事だけを引き寄せるからです。「いかなる他人をも決して悪く思わない」というのは至難の業ですけれども、自分の良き人生と良きカルマを確立するには、やはりそうすることが重要になってくるでしょうね。そして、なぜそうしなければならないという理由やその方法を平易に説いたのがアダムスキー哲学であると思うのです。これも私達が受けた重要な影響の一つです。ただし、ここは地球です。常識的な判断によって、いわゆる「正邪」を直視し、他人を傷つけて平気でいられるような人物には接近しない方がよいでしょう。危険な人物を避けることはスペースピープルもやっているのですから、良い意味で警戒は必要です。つまり憎悪感や恐怖心の伴わない警戒です。そのためには憎悪感や恐怖心をかきたてるような他人の言動や書物には接しないことが大切ですね。

 

 未来のことが知りたければ自分で予知するに限ります。そうすれば的中しなくても他人を恨む必要はなからです。また予知したことをむやみに他人に喋らない方がよいでしょう。はずれたら面目を失い、自信をなくすからです。予知能力開発練習は深刻にならずにリラックスしながら気楽に行うことです。頑張って下さい。